あけましておめでとうございます。
2025年が皆さまにとって素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈りいたします。
新しい年のスタートは、気持ちを新たにする絶好の機会ですよね。
目標を立てたり、生活習慣を見直したりと、心を引き締めたくなる時期でもあります。
そんな新年だからこそ、日頃は当たり前に使っている「言葉」について、改めて考えてみませんか。
私が日頃から重視しているコミュニケーションには、「自分の言葉にどんな思いを込めるか」という視点が欠かせません。
特に日本語には、“言霊(ことだま)”と呼ばれる“言葉に宿る力”を大切にする考え方が受け継がれてきました。
言葉を大切に扱うほど、自然と自分自身の心まで整えられていく──そんな不思議な魅力を秘めているのです。
言葉には目に見えない力が宿るという考えで、良い言葉を使えば良いことを呼び込み、悪い言葉を使えば不運を招くとも言われます。
なんだか少しスピリチュアルに聞こえるかもしれませんが、実際、誰かに「ありがとう」と言われると温かな気持ちになったり、鋭い言葉を投げかけられると深く傷ついたりするのは、私たち自身が日常で体感していることですよね。
今回は、そんな“言葉の持つ力”をテーマに、普段の言葉遣いを見直してみるヒントをお話しします。
たとえば日常的に使う「お米」「お水」という何気ない呼び方に注目するだけでも、日本人の精神性や敬意、そして言霊の考え方が垣間見えてくるのです。
「お」や「ご」に込める気持ち
普段の暮らしの中で、意識せずに「お茶」「お箸」「ご連絡」「ご挨拶」といった言葉を使っていませんか?
この“お”や“ご”は、もともと漢字の「御(おん)」に由来しており、相手や物事を敬う意味を表すための接頭語だと言われています。
一見すると形式的なマナーのように思えますが、よく考えてみると食べ物や飲み物、道具など“当たり前にそこにあるもの”にまで「お」や「ご」を添えるのは、実は日本の文化ならではの特徴です。
私たちは日常の中で、本来なら“人間より下”と見られそうなものにも敬意や感謝を込めて扱っている。
そんな姿勢が、ほかの国々にはあまり見られない日本人特有の精神性を象徴しているのかもしれません。
「お米」と「お水」に宿る敬意
とりわけ「お米」や「お水」という呼び方には、日本人のルーツから受け継がれてきた深い感謝の思いが詰まっているように感じます。
● お米
日本人にとってお米は、昔から主食として欠かせない存在です。
田植えや収穫のたびに地域の人々が協力し合い、収穫後には豊作を祝う祭りを行う──そうした風習は、日本独自の農耕社会が育んだ結束や感謝の表れだと思います。
たとえ一粒ひとつぶが小さいものであっても、多くの人の手間ひまや自然の恵みが注がれて実るものだからこそ、その大切さを噛みしめ、自然に“お”を付けて呼ぶようになったのではないでしょうか。
● お水
生命を維持するのに欠かせない水も、実はとても貴重な資源です。
現代では蛇口をひねれば当たり前のように出てくる水ですが、昔は井戸や川から汲み上げる苦労が必要でした。
その貴重さを知り、自然の恵みに感謝する心が、「お水」と呼ぶことに結び付いているのだと思います。
普段の食事の場面や、お茶をたてる所作など、さまざまなシーンで“お”を添えることで、さらに敬意を深めているようにも感じます。
言霊(ことだま)とコミュニケーション
私が提唱しているコミュニケーションの考え方の中には、「言葉には力がある」とする日本古来の“言霊(ことだま)”の考え方があります。
言霊とは、「言葉には目に見えない霊力が宿る」という信仰で、良い言葉を発すれば良いエネルギーを呼び込み、悪い言葉を使えば災いや不運を呼ぶ、と考えられてきました。
「お米」「お水」と呼ぶだけでも、そこに「大切にしたい」という気持ちが添えられ、結果的に自分自身の心も豊かにする力があるのではないかと思うのです。
食事の前に「いただきます」、終われば「ごちそうさまでした」と言う習慣があるように、言葉を丁寧に扱うことで相手やものごとに敬意を払う──それは日本人ならではのやさしく繊細なコミュニケーションといえるでしょう。
普段の言葉遣いが育むもの
私たちが毎日何気なく使っている言葉は、自分と相手をつなぐコミュニケーションツールであるだけでなく、自分の内面を映し出す鏡でもあります。
もし投げやりな言葉ばかりを使っていれば、どこか心がすさんできてしまいがち。
でも、たとえ小さなことでも丁寧に言葉を選び、“お”を添えてみたり、相手を思いやる表現を加えたりしてみると、意外なほど会話の雰囲気が柔らかくなるものです。
そうした積み重ねが、自分自身への信頼感や他者への感謝を生み、人を惹きつけるコミュニケーションへとつながっていきます。
敬意と感謝をきちんと込める言葉遣いは、相手の心にも届きやすいですし、何より自分自身が「人や物を大事にできている」という実感を得ることで、心の豊かさも育まれるのです。
まとめ:日常の言葉にこそ感謝を込めて
当たり前に口にする「お米」「お水」という呼び方にも、日本人が育んできた深い精神性や言霊への信仰が色濃く表れています。
それは単に形式的なマナーではなく、生きる上で欠かせないものを“ありがたい”と感じる気持ちを、日常の言葉遣いに込めようとする姿勢なのです。
コミュニケーションは生きた言葉のやり取りです。言葉の持つ力を意識し、相手や自然界の恵みに感謝を表すことで、より良い関係性を築き、自分の心も豊かに育んでいくことができるはず。
新年という節目に、そんな言葉の力を見直してみると、きっと身近なところから気づきや変化が生まれるはずです。
いつもより少しだけ丁寧な言葉を意識してみたり、相手や自分自身をいたわる言葉を選んでみたりするだけでも、驚くほど周囲との関係が穏やかになるかもしれません。
最後に、古くから神社などで唱えられている祝詞(のりと)をご紹介します。
新年のご祈願や、心を整えたいときにぜひ唱えてみてください。
「祓(はら)えたまえ、清(きよ)めたまえ、神(かむ)ながら守りたまえ、幸(さきわ)えたまえ」
神道では、「自らの穢(けが)れを祓い清める」ことこそが、信仰的にも神さまに近づくための大切な行いとされています。
意味としては、
「お祓いください、お清めください、神さまのお力により、お守りください、幸せにしてください」
という願いが込められています。
私たちの暮らしが、より清らかで穏やかなものになるよう、こうした日本の伝統文化に宿る思いを日常に取り入れてみるのも素敵ですよね。
2025年が皆さまにとって、言葉の力と共に心豊かに過ごせる一年となりますように。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。